フジクラグループは、5ヵ年を見据えた「2020中期経営計画」の初年度が終了し、次なる飛躍に向け力強く躍進を続けています。伊藤社長がトップメッセージで明言されている“サステナビリティ社会の実現”と“私たちグループの継続的な発展”の両立が示すように、CSRにおいても様々な進展が見られます。
日本のみならずグローバルにおいても機関投資家によるESG投資の存在感が増し、社会の関心が高まっています。貴社においては、世界最大の年金基金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)により今年7月に新設された株価指数「FTSE Blossom Japan Index」および「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」の2つに組み込まれ、CSRを含む経営の質の高さが客観的に評価された形となります。前者はESG全般の取り組み、後者は女性の活躍に関する取り組みがテーマとなっています。伊藤社長は「社員が財産」という考え方を重視しており、働き方改革をさらに推し進めるなかで、前述のMSCI指数のみならず、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」の3つ星も取得していることは素晴らしいと思います。
人権の取り組みにおいても進展が見られ、新たにフジクラグループ人権方針を策定し、国際規範との整合を図りつつ、人権尊重の責任の考え方を示しました。今後人権デュー・ディリジェンスの導入に取り組んでいくことになると思いますが、それに先立ち会社の考えを人権方針として指し示したことは重要な一歩となります。また、昨年の第三者意見において、社会・環境への取り組みと事業面との関係性を持たせると良いとコメントを申し上げましたが、今年はCSV(共通価値の創造)の観点から事業との関係性を示すことで、一段階進んだ形となっています。
全般的な改善点としては、昨年度に設定した「環境長期ビジョン2050」が絵に描いた餅にならないように具体的な取り組みを進めていくことが大切です。バックキャスティングにより中長期的な目標を示し、進捗を測ることができるよう具体的なKPIを設定し、年度ごとの進捗状況を示していくと良いでしょう。その際に、長期目標につながる4つのチャレンジと、環境マネジメントで管理している項目との関連性も分かりやすく示せると良いと思います。また、科学的根拠に基づいた目標設定を推奨するイニシアチブScience Based Targets(SBT)や再生可能エネルギー推進を目的とする国際イニシアチブRE100など、グローバルレベルで注目される枠組みにも積極的に参画し、“サステナビリティ社会の実現”に向けて、他のグローバル企業とも協力関係を築いていくことは大切な取り組みだと考えます。
昨年度、貴社はSDGs(持続可能な開発目標)の考え方をいち早く示しました。一方で、SDGsの17の目標から選んだ6つの目標に対して、取り組み状況をまとめた表は確認できていますが、この1年間にどれくらいの進展があったのかについては不明瞭です。また、前述のCSVについても同様のことが言えますが、取り組みを進めることがどのような企業価値の向上に結びついているのかについて言及できると、ESGを重視する機関投資家に対するさらなるアピールにもなります。
CSRサイトにおいて、CSR重点方策に対する2020年目標を明示し、さらに単年度での計画と活動結果を一覧で示したことで、会社全体の取り組みを概観することのできる、望ましい開示に近づいていると思います。今後、一覧から取り組みの該当サイトにリンクが貼られると閲覧者にとっての利便性がグッと高まるのではないでしょうか。
また、現在ESG情報へのアクセスはCSRサイトからのみとなっていますが、投資家情報のサイトからも直接ESG情報にアクセスできることが望ましいと考えます。CSRの取り組みを企業価値向上の観点から見つめ直し、長期視点の投資家に対して自ら能動的に働きかけることは、IR活動の質的な向上にも貢献するからです。
佐倉事業所の自然を活用していく目的で「佐倉千年の森プロジェクト」を立ち上げられています。希少種に直接触れることができる場としても、地域社会の人々に愛される環境になっていくものと想像しています。こうしたコミュニティ重視の姿勢を含め、「100年を優に越す歴史を持つ企業だからこそ」の経営哲学に裏打ちされた、フジクラグループならではのCSRを推し進めていかれることを期待しています。
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